校長日記35
新型コロナ感染防止対応の生活体験
 日本生活体験学習学会のホームページで、会員リレートーク「コロナ禍における生活体験」の原稿が募集された。以下の原稿を送信したところ、すぐさま掲載していただいた。

 飯塚市庄内生活体験学校の主要事業は、通学合宿と生活体験合宿の2つの合宿事業である。通学合宿は6泊7日、生活体験合宿は1泊3日の合宿事業で、前者は年2〜3回、後者は18回前後、両者合わせて20回程度の合宿を毎年実施してきた。例年通りの日程で実施するつもりで3月から公募チラシ7.000枚を通販印刷に頼んで配布寸前まで準備を進めていた。チラシ印刷を発注する時期までは、今直面しているような状況になろうとは予想していなかった。
 市内の小学2年生以上の全児童を対象に公募する事業だから、チラシ配布、応募申し込みの回収一切を市内全小学校の協力を得なければならない。3月30日にいたって、飯塚市より「新型コロナウイルス感染症対策について」が発出された。それまでは、3月31日までを施設利用自粛要請期間とされていたものが、4月14日まで施設利用の自粛が求められることと決定した。
 コロナ感染防止の3密を言われるまでもない、合宿事業は3密の極みを実行しようというプログラムだから終息を見るまでは実行できる見込みは立たない。4月6日、市内小学校へ配布するばかりになっていたチラシ配布を延期した。7日に至って政府が東京都など7都府県(福岡県を含む)に対して新型インフルエンザ特別措置法に基づき緊急事態宣言を出したのは、ご承知の通りである。15日になって飯塚市議会全員協議会が開かれた。同協議会では、職員同士の接触割合を7〜8割減にするという要請が出された。17日、生活体験学校職員の一部を在宅勤務とすることとした。24日、生活体験学校職員の一部を特別休暇の対象とすることとした。職員の密なる勤務を解消する措置であった。5月4日にいたって政府は新型コロナウイルス対応について、緊急事態宣言の対象地域を全都道府県としたまま、5月31日まで延長すると正式決定した。5月15日、飯塚市は公共施設の休館を5月24日までとし、5月25日から開館すると決めた。18日にいたって、飯塚市教育委員会の指示により生活体験学校は、5月25日(月)から開館した。合宿事業の公募を延期したまま6月中旬にいたって、合宿無しの日帰り体験事業を企画して公募の準備に入った。7月上旬に申し込みを集約して8月以降の日曜日に一日研修として体験活動を再開する予定である。宿泊を伴わない一日だけの活動は時間としては短か過ぎる感があるが、短時間の体験活動の積み重ねが宿泊体験事業の水準を高めていくと思えば、これもまた力を入れる価値は十分にある。長らく続けている無農薬野菜栽培体験活動は、今年度はキューピーみらいたまご財団の助成を受けて、「作って食べて学ぶ〜食育キッズ講座」の名称で全9回を計画した。4月、5月の2回は実施を見送ったが6月27日から開始する予定である。他方、今年度で4年目を迎える「幼児の野外における生活体験支援活動」は、新型コロナ感染防止のため例年と異なる対応が求められたものの幼児教育職員の熱意は十分感じられる。むしろ今後いろんな支援の要請があるのではないかと思っている。5月、6月の支援活動は次の通りであった。

 5月9日(土)  ひまわり幼稚園にタマネギ1箱届けた。
これは昨年ひまわり幼稚園々児が植えたタマネギが極早生だったため5月上旬に収穫時期を迎えた。園児を生活体験学校に迎えることができなかったので、止む無く園児が植えた分だけ収穫して園に届けた。例年なら起こることのない活動だった。
 5月21日(木) 庄内こども園より依頼があったので職員が機器を軽トラックに積んで園のイモ畑を耕した。イモ苗植えの準備が整った。これはコロナ感染防止とは関連しない昨年と同様の支援活動だった。
 6月5日(金)
愛宕幼稚園年長組89名、タマネギ収穫体験にやってきた。くま、きりん、ライオンの3班編成。
各班2名の引率教員、10:30、11:00、11:30と時間をずらしての到着。バス乗り5分、降りるのが5分、活動時間は各20分。生活体験学校職員の準備作業は、畑のマルチ除去、草取り、茎を切り取る、各班を2分してタマネギ班と赤クローバ班にする。
15名づつタマネギ収穫と赤クローバ採取に分かれて交代しながら実行した。
赤クローバは写真撮影をした後、ヤギ、ウサギに採取したクローバの餌やりをした。タマネギ収穫も赤クローバ採取も時間が短くて、園児は堪能できたとは言いにくかった 

 
 6月10日(水) 愛の光保育園から園児16名と園長他3名がタマネギ収穫にやってきた。10:30〜11:15.タマネギ1人4個持ち帰る。園児が抜いたタマネギの茎と根は生活体験学校職員が切り取った。能楽堂で休憩。クリ畑の観察と写真撮影。キュウリ、オクラ、ミニトマトの観察。やぎとウサギの餌やり。ウサギのオス2羽を外のウサギ小屋に入れて展示。ヤギはフェンス内に放して餌やり。生活体験学校職員がクリムゾンクローバ(赤クローバ)を鎌で刈ってリヤカーに入れる。園児は、リヤカーからクローバをもらって餌やりを楽しんだ。

 4月から6月にかけて、従来の中核事業である宿泊体験事業は実施できる環境にはなかったが、受け入れに欠かせない生活体験学校の管理運営は確実に進んでいる。行政の予算措置が実現して生活棟の男子女子両室の空調機を新しくし、ホール全体に初めて大型の空調機を設置すべく工事中で6 月末には完工する。トイレの便器を幼児が使用できるものに新しく取り替え、手洗いの蛇口も幼児が使える仕様に変えた。昨年度初めて予算措置してもらった園と生活体験学校の往復バスの運行も庄内保育園の利用から始まる。児童の宿泊体験事業と幼児の野外生活体験事業の二本柱の生活体験学校が着実に実現しつつある。