校長日記27
生活体験学校開設30周年を祝う
 記述が後先になってしまったが、これまでの生活体験学校をご存知の方には2015(平成27)年4月から向こう5年間 NPOドングリが生活体験学校の指定管理者となったことをご承知おきいただきたい。飯塚市直営のころとは、人も変わったし様子の全てが変わった。事務室にあったパソコンまで新しく買い変えて出発したのが今の生活体験学校である。さて、前回書いたように第2回生活体験発表会の骨格は決まっていたが、開設30周年というからには記念と呼べるような内容が今一つ欲しい。あれこれ考えるうちに、生活体験発表会の午前の時間帯に何も予定を組んでいないので、この時間に「ひこうき雲」の関係者の皆さんに集まってもらって懐旧談を交わしてもらってはと思いついた。「ひこうき雲」と呼ばれる高校生のボランティア活動は、1992(平成4)年9月の第2土曜日の学校が休みになるのを契機に始まった。それは、当時の障がいをかかえた小学生を中心に大人も加わった集団が、金曜日の放課後生活体験学校に集まって宿泊した高校生ボランティアと交流するというプログラムだった。金曜日の夜には地域で活動する成人ボランティアが、毎回自分の実践を高校生に語りかけるという一コマが企画されて、集まった高校生にボランティアの多様な活動を紹介した。毎月登場する個性的で活動的な「大人」の実像は、自らの進路を模索する高校生に大きな刺激を与えた。「ひこうき雲」の活動は10年間続いた。中核としてこの活動を支えたのが、当時の福岡県立嘉穂東高校ボランティア同好会顧問の北村嘉一郎先生と地元庄内の障がい児者と活動を共にしていた頓宮昭二先生であった。頓宮先生は中学校の理科を教える元教員で、私が1967(昭和42)年から5年余り勤めた旧嘉穂郡碓井町立碓井中学校で一緒に勤めた元同僚でもあった。「ひこうき雲」の活動が終息して16年の空白がある。余りの長い空白だから、果たして何人の人が集まってくれるかという不安があった。それに、私どもから大した呼びかけもできなかった。にもかかわらず、当時の高校教員の方が北村先生、山本賢治先生(元西田川高校)、石井さとみ先生(嘉穂東高校)と3名も来てくださった。
 
   ひこうき雲の談話会
当時の生徒さんが11名、児童の保護者が1名、合わせて15名の集まりになった。西田川高校の元生徒さんが6名、嘉穂東高校の元生徒さんが3名も出席された。お互いの顔さえ見忘れるほどの長い空白があったにもかかわらず、蘇る記憶とともに話題はつきない場面となった。活動の盛んな当時も、そして今も感じていることは、高校生だけでなく関わってくださる高校教員の指導が介在しなければ活動は継続しないということである。「ひこうき雲」の活動の重要性は、顧問という高校教員の介在なしには、高校生の心に届きにくかったのである。懇談は暖かい雰囲気のうちに終わったのだが、今の生活体験学校が高校生のボランティア活動活性化のためにどのようなお手伝いができるかという課題は残った。今後、時間をかけて熟考し、方途を探りたい。
午後は来賓を迎えて開会式をした。私は、主催者挨拶で30年の永きにわたって生活体験学校を続けられたのは、第一には合宿体験に参加したいという子どもの高い参加意欲があったこと、第二にはこれに応えようと奮闘した大人のボランティア活動があったこと、第三にはこれを支持し支えてきた行政の力があったからであると述べ、感謝の意を表した。来賓あいさつでは最初に西大輔教育長のお祝辞をいただき、続けて古賀倫嗣日本生活体験学習学会々長のお祝辞をいただいた。来賓紹介では、井上智朗国立夜須高原青少年自然の家所長、久原美保教育部長、高瀬英一生涯学習課長、原昭仁生涯学習課長補佐が紹介された。古賀会長、井上所長のご臨席を賜り、そのうえ飯塚市教育委員会の幹部総出演の観がある来賓のご臨席を賜り、その後の発表までお聴き取りいただけたのはありがたいことであった。開会式の後、記念品の目録贈呈があった。寄贈者は生活体験学校OBOG会「ぐんぐん」でスポットクーラーをいただいた。この夏はとりわけ熱さが厳しかったので大変ありがたい贈り物だった。早速に使わせていただいている。生活体験学校のホームページによれば、「ぐんぐん」の会員は次の通りである。篠崎和史(代表)、成重貴康、杉山(田原)樹里、園田(豊田)亜佳音、井野(永見)かおり、浅見(西)良子、福間(早坂)美紀のみなさんである。杉山(田原)樹里さんは、福岡教育大学在学中も生活体験学校のボランティアとして活動してもらったのだが、今は結婚して愛知県に住んでいる。長年書に親しんでいるので、記念に掛け軸を寄贈してもらった。「温故知新」の四文字である。掲げる箇所を定めて飾ることにしたい。多くの来賓にお越しいただいたうえに、OBOGから贈り物まで頂戴して30周年を祝うことができたのは、望外の喜びであった。開会式の後、二つの体験発表と実践発表があった。体験発表の一つが3人の成人ボランティア、もう一つが合宿体験者と保護者を含む二組だった。実践発表は二つで、一つは昨年から始めた「幼児の野外活動支援」の概要で、もう一つは全職員による実践発表であった。幼児の野外活動支援は、着手したばかりで実践期間も短いことから、今後も試行を重ねて成果をあげたいと思っている。職員の実践報告は、人前で自分の実践を発表するなど慣れないことはしたくないに違いないのだが、無理にお願いしてやってもらっている。以前なら簡単ではない難しいことだったのだが、今はパワーポイントなどという便利な機器があるので、自分がしている仕事場面の写真などを映しながら話ができるので、やりやすいといえばやりやすい。このような体験発表と実践発表を組み合わせた発表会は、出演者は飯塚市民だけというところにこだわっている。他の市町村の優れた実践を聞くのも確かに有益だが、それをプログラムに持ち込むと、その分だけ市民の登壇時間が減ることになるので採用しなかった。市民という場合、生活体験学校の職員も含めて市民というくくりにしている。それよりも裏番組と言ってしまうと語弊があるが、8日(土)も9日(日)も子どもたちが今現在楽しんでいる体験プログラムの実演を組んでみた。8日(土)は学会員の研究大会だったが、石焼きイモを実演してみせた。学会プログラムが進行しているのに並行して実施したので場面を実際に見てもらうのは難しかったが、石焼きイモの仕上がり加減は実際に賞味していただけた。昨年の合宿参加者に大いに受けたのは、何と言っても石焼きイモだったのである。二日目の9日(日)の昼は、事前配布のチラシにはピザ焼きとなっていたのだが、暑さにあえぐ気温を考慮して直前にそうめん流しに変えた。こちらも今年のヒットプログラムである。それはヒノキ作りのそうめん流し板だったのである。午前の「ひこうき雲」の懇話会進行中に職員に働いてもらって、そうめんと畑の野菜を使った野菜(かぼちゃ、ゴボウ、タマネギ)の素揚げを作ってもらった。花より団子の趣になったが、合宿の子ども達に支持歓迎された去年の石焼きイモ、今年のそうめん流しの醍醐味は、8日(土)、9日(日)の参加者に分かっていただけたのではあるまいか。
(飯塚市庄内生活体験学校々長、平成30年 9月19日)