校長日記24
合宿したら子どもは変わるか? その2
 前回、生活体験学校の合宿に参加すると、子どもは変わる「きっかけ」をつかむと書いた。言い換えれば、変わるも変わらないもその後の家庭での生活の模様次第ということになる。生活の模様というのが、これまた様々あって一概には言えないが、これだけははっきりしている。それは、繰り返し体験しなければ上手にはなれないということである。教える親の側からすれば、「前にも、教えたでしょう!」と言いたいところを、ぐっとこらえて今日も昨日と同様、同じことを教えなければならない。つまり、一度や二度させたぐらいで、きちんとできるようにはならないのが、子どもである。これが親としてはなかなか辛いところでもある。
 
  (合宿の最終日に配るハガキ)
第17班(2月17〜18日)2年林田たくみ君の返信である。「やるときめたこと」は、米を洗ってごはんをたくことです。◎がついているから、自分から進んでしたということである。「やってみて気づいたこと・思ったこと」は、米をあらうときに白いえきが出ていることです。これは米洗いを自分でやってみて気づいたことである。「保護者の感想」は、丁寧にお米をといでいました。水加減もよく上手に炊けていました。これからも時々やってもらおうと思います、と結ばれている。時々やってみようと思わせるには、やった後にしっかり誉めてあげることが大切である。やったことを認めてやる、誉めてやるのは、子どものやる気を引き出す基本である。小学校2年生の子どもの何割が自分でご飯を炊いたことがあるだろうか?わが子が自分でご飯を炊くことができた!素晴らしいことではないか。「ごちそうさまでした」という言葉を教え、言葉を発するタイミングを覚えさせることも大事だが、自分で飯を炊いたこともない子どもの言葉と炊いたことのある子どもの言葉では言葉に込められている感謝の思いが違う。言葉は大事なものだが、言葉に込める思いが持てるような体験をしっかり積むことはもっと大事である。体験の伴わない言葉上手を育てていると、先で後悔することになるだろう。第17班(2月17〜18日)3年こんどうあやねさんの返信である。「やるときめたこと」は、野さいスープを作ることである。近藤さんも◎がついているから、自分から進んでしたということである。「やってみて気づいたこと・思ったこと」は、野さいスープを作ってお母さんたちはふつうに作っていたけど、やってみるとお母さんたちは毎日たいへんだなと思いました。「保護者の感想」は、生活体験合宿から帰って来た日に早速野菜スープを作ってくれました。今までスープに入れてなかった野菜も使ってくれてキライだった野菜も食べられるようになり、とても良い合宿になったと思います、と結ばれている。前回、合宿の効果は何をおいても親と離れて暮らすという事実から生まれると書いた。自分でやってみて初めて分かる親の有難みである。
 親と離れて暮らす合宿だが、家庭ではできない体験ができる。たとえば、第17班(2月17〜18日)の調理の指導をしたのは田中秀征君と玉田由紀さんである。田中君は純真短期大学(福岡市南区)食物栄養学科の2年生である。4月からは嘉麻市内の病院の栄養士として勤めることが決まっている。玉田さんは市役所の職員で、料理が趣味という人である。この2人が中心になって、加えて生活体験学校の職員が指導するので、場面によっては個人指導とも言える丁寧な指導がされる。密度の高い食育が実践されているのである。第15班(1月27〜28日)の6年和田杏彩さんの返信である。「やるときめたこと」は、週に1回以上は料理をするということ。和田さんも◎がついているから、自分から進んでしたということである。「やってみて気づいたこと・思ったこと」は、大変さが分かりました。卵焼きや野菜スープ、カレーなどをつくりました。とても楽しかったです!!「保護者の感想」は、とてもおいしいご飯を作ってくれました。弟にも、作ったご飯を喜んで食べてもらって、うれしそうでした。切る作業も、とても上手になってきました、と結んである。6年生ともなるとメニューも多彩になって、お母さんの腕前に近づいていこうという意気込みがうかがわれる。和田さんもお母さんのご苦労が分かったと書いている。最後に第17班(2月17〜18日)4年林田珠実さんの返信である。「やるときめたこと」は、新しい料理にちょうせんすること。林田さんも◎がついているから、自分から進んでしたということである。「やってみて気づいたこと・思ったこと」は、料理は科学みたいでおもしろかったし、もっといろいろなことが知りたいなと思いました。「保護者の感想」は、自分で作りたいメニューを決めました。スコップコロッケです。玉ねぎのみじん切りが難しかった様子ですが、がんばりました。できたてを食べ、家族からも美味しいと言われて、うれしかったそうです。また作ってほしいです、と結んである。どの返信も読むうちに家庭での活動がうかがわれて心温まる思いを誘われる。難をいえば男子からの返信の数が少ないということぐらいである。
(飯塚市庄内生活体験学校々長、平成30年 3月15日)