校長日記14    
 6日間の子ども食堂終わる 
 平成29年3月18日(土)、6回目の「子ども食堂」が終わった。この子ども食堂は、九州電力の「九州みらい財団」の助成を受けて実施したもので、6回目の参加者は16名だった。6回合わせて105名の参加者があった。ほとんどが飯塚市内潤野小学校々区内からの参加者だった。参加者数の平均は18名に達し、ほぼ計画通りの人数だった。参加者の人数が心配だったことに加えて事故もなく無事に終わったことが嬉しかった。子ども食堂の参加者数にこだわるのは、それ以前の取り組みで参加者の確保が簡単ではないことを実感していたからである。そもそも生活体験学校で子ども食堂が話題にのぼったのは、平成27年9月のことだった。その頃、子ども食堂の取り組みの難しさを私は十分に分かってはいなかった。
平成28年1月には思いを込めたチラシ300枚が仕上がった。業者から送られてきたチラシは上出来だったのだが、「子どもに配ってあげましょう」と言ってくれる機関・団体は現れずに、結局、手配りするしかなかった。「配る」という行為には、「リアクション」が発生する、その応対が難しいということか?と推測した。「経済的に困難をかかえている」子どもにチラシを渡すという、ただそれだけのことと思った私の認識が甘かった。しかし、チラシ作りや生活体験学校での談義に触発されて、1月16日に職員の河中利通さんが自分で生産した米30s2袋(1俵)を子ども食堂に使ってくださいと持ち込んでくれた。それまでないことを始めようとすると落胆することや嬉しいことや、あれやこれやが、ないまぜになって発生する。平成28年1月17日(日)、主任児童委員の藻形陸雄さんが小学校2年生と6歳の子ども2人を、初めて生活体験学校に連れて来てくれた。初めての子ども食堂の営みであった。毎月1回のペースで2月から6月までチラシで広報した通りに子ども食堂を開いた。2回目は2月20日(土)、この日10名の大人が集まって焼きうどん、焼きそば、おにぎり、ナムルを作ったが、子どもはついに現れなかった。午後3時ころ、藻形さんが件の子ども2人に大人が作った料理を届けた。この料理を受け取って食べた子どもは、この日初めての食事が藻形さんが届けた食事だったという。3月19日(土)には1名増えて3名の子どもが来てくれた。4月29日(金、昭和の日)から5月8日(日)まで8回の子ども食堂を開くことを決めて再びチラシを作った。「連休子ども食堂」の発想は、学校が休みになると学校給食はないから困っている子どももいるだろう、だから開いてみようとなったのだが、子どもに来てもらう新たな手立てがあったわけではない。5月7日(土)、3名の子どもが来てくれた。これも、地元庄内小学校の佐藤明美教諭が家庭訪問をして声をかけてくれた効果もあって、3名の参加が実現したというわけである。つまるところ、主任児童委員や学級担任や個別の子どもに接触できる立場にある人々の協力があってはじめて、子ども食堂に子どもを迎えることができるということが分かったのである。にもかかわらずというか、達成感を手にしないままの試行錯誤を経て、目的欄に貧困対策の一環として実施するということを掲げて、九州みらい財団に子ども食堂の助成を申請した。踏み出したきっかけは、会員の一人でもある渡邉福さんが関わっている子ども支援活動の地域を対象に実施すれば、一定数の子どもの参加を期待できるのではないかという見通しが語られたことである。潤野小学校々区内の当該地域には、子どもの活動を長年支援している一人の自治会役員がいるということだった。私は、地域で子どもに信頼されている人物が一人でもいて核になってくれれば事業は成立すると思っている。九州みらい財団への申請が認められてすぐに、渡邉さんと子ども支援をしている自治会役員を加えて簡単な打ち合わせをした。とにかくやってみようという感じで、第1回目は10月15日に13名の参加者を得て実施した。
 実施の方法は、長年生活体験学校が培ってきた仕方に則って行う。畑の野菜を収穫し、洗う、切る、煮る、つぎわける等々自分たちでできることは全て自分でする。お客さん扱いなどは全くしない。時間があれば畑の作業、ヤギ・ウサギの小屋掃除もさせる。生活体験そのものをくぐらせる、それがこの施設の生命である。報道される子ども食堂とはかなり違う仕方が生活体験学校の仕方である。子ども食堂も例外ではない。1回目が終わると同時に子どもたちの参加希望者が多いという反響が分かった。2・3回目は生活体験学校自慢のピザ焼き体験である。ピザ窯は当法人会員の手作りで薪を燃料に焼き上げる。4回目はベテラン調理師でもある主任児童委員の藻形さんの指導になるチャンポン作りである。プロが目の前で作って見せるだけでなく、プロが直接指導するチャンポン作りのすごさに、子どもはベテラン調理師とはどんなものかを実感した。5回目はおにぎり弁当の作り方、6回目は栄養価を高める即席めんの作り方を体験した。2回とも日常生活に活かして使える調理法を学んだ。6回を通して言えることは、子どもが喜んで活動したということである。体験活動の面白さ楽しさを身をもって実感した子ども食堂だった。九州電力の「九州みらい財団」の今回の助成に改めて感謝している。
(飯塚市庄内生活体験学校々長、平成29年 3月22日)