校長日記10    
 竃(かまど)を移す
 「大屋根を作る」作業が進むにつれて、現在飯盒でごはん炊きをしている新建屋での作業を、新しく作る大屋根の下でしようと考えた。今の「ごはん炊き」は、鉄製の溝蓋を加工して作った枠に飯盒をのせ、周囲を耐火レンガで囲って竃(かまど)に仕立てる。鉄製の枠は溶接免許を持っている職員の祝原さんに作ってもらったもので、移動可能な「かまど」である。この建屋では、ご飯を炊いている子どもと薪を割っている子どもが背中合わせに仕事をしているという状態がよく見られる。改めて言うまでもなく、この新建屋は使い勝手がよく助かっているのだが、難を言えば少しばかり狭い。かねてから、もう少し場所が広ければ子ども同士の間隔を十分に確保して安全に作業をさせることができると思っていた。大屋根の南に向かって延長した1間半の屋根の下に、野外炊飯の竃(かまど)を固定して作ることに決めた。まず初めに、一つ目の火床を作る。木製の枠を作って枠内の土を除く。そこにセメントを流し込んで耐火レンガを敷き詰める。セメントが固まって、しっかりした耐火レンガの火床ができた。作業を進める祝原さんによれば、竃(かまど)に限らず何かを据える場合はその下部にしっかりした土台を作って、その上に据えるのが常道だという。固まった火床の上に飯盒をかける鉄製の枠を置いてみる。位置を決めて周囲を耐火レンガで囲む。最後に三段重ねの耐火レンガが倒れないように三方から耐火性のある材料でカベを作って、囲う。ここまで出来れば火を焚いて使い勝手を確かめたくなるのだが、以前から今使用中の竃(かまど)の周辺一帯が燃えさしの木と炭で全体黒ずんでいるのが気になっていた。つまり、ご飯を炊いた後の燃えさしの木と炭の始末が良くないのである。自宅にあった「消壺」を持ち込んで使わせようとしたが、子どもには「消しつぼ」の用途が理解できない。子どもが分からないのは無理もない、職員にさえ分からないのだから。消壺が小さくて燃えさしの木全部を入れられないせいもある。水を張ったバケツに燃えさしの木を漬け込んだままになっていることもあるが、見た目がよくない。これを何とかしたくなった。祝原さんに頼んで、出来上がった火床の前に長方形の穴を掘って耐火レンガを使った消壺を作ることにした。平成28年7月27日に始めた。炊飯が終わった後、地下の消壺に燃えさしの木と炭を入れてみた。ところが、地下の消壺は完全に密封できていない空間だから、その中で再び燃え始めて消壺の用をなさない。祝原さんと話し合った結果、炊飯が終わった後、いったん地下の消壺に燃えさしの木と炭を入れて、その場でじょろを使って水をかけ、火を消して蓋をすることにした。地下の消壺は、7月31日には完成した。この間に、もう一つの火床と鉄製の枠が作られた。枠は新たに作られた新品である。これで、飯盒なら5つでも9つでも同時に炊くことができるようになった。二つの炊飯かまどの間に鍋の煮炊きができる移動式のかまどを生活文化交流センターから運んできた。この移動式のかまどは新しく作って生活文化交流センターに常置されていたものだが、もともと同センター内には「おくどさん」が二基あって、必要不可欠というよりは、「あったら便利」という程度の必要度だった。底部に取り付けられていた車輪を取り外して大屋根の下に固定設置された。こうして、大屋根の下には新たな竃(かまど)三基が並んだ。それも地下式消壺という、これまでなかった機能が付加されているという優れものである。平成28年度の特徴といっても良い構造物である。
 平成28年8月7日に、新しく薪置き場とナタや火ばさみなどの道具置き場を作った。これで竃(かまど)の引っ越しは終了した。便利になった飯盒炊飯だが、7月23日に大屋根の下に蛇口を新設した。蛇口一つがあるとないとでは随分と違う。
使いながら作る、作りながら使う、生活体験学校の確かな工作である。
(飯塚市庄内生活体験学校々長、平成28年8月15日)