校長日記8
子ども食堂初日、来訪者なし 
 困っている子どものための「子ども食堂」のプレ事業を取り組んでみようと動いた経過は前に書いた。平成28年1月17日(日)が、その日である。この日、調理の講師で、主任児童委員でもある藻形さんが、2人の子どもを自分の車に乗せて生活体験学校に連れてきてくれた。結果として、二人の子どもにピザ焼きを体験させることができたし、焼いたピザとおにぎりを持たせてやることもできた。そこで、チラシに記載した第1回目の「子ども食堂」、2月20日(土)の様子である。天気予報は、あいにくの雨である。当日はやはり雨、それも小雨というのではなく出足を鈍らせるような強い雨になった。雨でなくても、本当に困っている子どもが生活体験学校まで来てくれるかは疑問だった。私は、藻形さんを講師に食事作りの講習をやってもらえれば、仮に子どもが一人も来てくれなくても準備と実施の意味はあると思っていた。当日、生活体験学校に来てくださった大人は、主任児童委員の藻形さん、高橋さん、お米を提供してくださった齊藤さんである。この日、出勤日だった職員は、原、永渕、黒葛原、祝原の4名だった。事前に取材申し込みを受けていたのは、読売新聞と西日本新聞の2社である。この日の様子は、ありのままを読売新聞筑豊版に書いていただいた。私を含めるとあわせて10名の大人が「子ども食堂」初日に集まったのだが、肝心の子どもは一人も現れなかった。しかし、藻形さんの話では期日前に件の子ども二人が藻形さんの家を訪ねてきたという。子どもの年齢を考えると期日と曜日を間違えずに藻形さんの家を訪ねることは難しいことだったかもしれない。しかし、「子ども食堂」に行ってみようという気持ちが全くなければ訪ねることはないはずである。つまり、「子ども食堂」に行くという意思はあったと考えることにした。さて、当日は焼きそば、焼きうどん、おにぎり、ナムルを作った。予想したように長年調理師として働いてきた藻形さんの調理の腕前は、職員の予測を超える高いレベルのものだった。プロとしての仕事に生活体験学校の職員が学ぶ事柄はたくさんあったというわけである。藻形さんは、この日も三度ほど二人の子どもを訪ねてくださった。三度目の訪問は午後三時ころだったという。この時、上に書いた食べ物を二人の子どもに手渡すことができた。それが、二人の子どもにとって、この日の最初の食事だったという。3月19日(土)は、第2回目の「子ども食堂」である。一週間前に藻形さんを訪ねたら二人の子どもが心待ちにしているという話で、「自分の車で二人を連れていきます」ということだった。当日は、また雨だった。なぜか、「子ども食堂」の日は雨に会う。9時半に子どもが藻形さん宅を訪ねることになっているということだった。予定通り10時前に藻形さんが子どもを自分の車に乗せてこられた。1月に来た子どもに加えて3年生の子どもが一緒に来た。3人の子どもが「子ども食堂」に登場したのは初めてのことである。大人は主任児童委員さんが2人、勤務日の職員が3人、勤務日ではないにも関わらず自発的に来てくれた職員が2人、小学校の教員が1人、それに私を入れると合計9人であった。この日の献立はチャンポンと決めてあった。職員と藻形さんの2人が食材の買い出しに行く。子どもたち3人はすぐにお米をとぐ作業に入った。それが終わるとヤギ小屋の掃除にかかった。ヤギ小屋の敷料には「もみ殻」を使っているが、今日はかなり汚れている。3人の子どもは掃除をする間だけ汚れていない隣の小屋にヤギを移すように私に言われて移そうとするのだが、ヤギは思い通りに移動してくれない。右に左に子どもたちの制止を無視して動きまわるヤギ2頭。さんざん失敗した挙句にようやく隣の小屋に移し終えた。次は一輪車を小屋の入り口に寄せて、ヤギの小便でぬれた「もみ殻」をスコップですくい取って一輪車に積み込む。床の3分の2近くの「もみ殻」を運び出して、そのあとに新しい「もみ殻」を一輪車で運び込んで敷き込む。3人の子どもたちは初めての作業に戸惑いながらも半分は嬉しそうに作業に取り組んだ。ちょうど作業の区切りがついた頃、食材の買い出し組が帰ってきた。いよいよ調理の仕事の始まりである。チャンポンの具材を切る作業はかなりの時間続いたが、3人の子どもたちは文字通りのマンツ−マンの指導を受けてすべての具材をきざんだ。作業が進む過程で職員たちは藻形さんが自宅で仕込んで持参された出汁のすごいことに気付いた。使われた昆布もイリコも一級品である。買い出しに行って買ってきた食材だけでチャンポンを作るのではないという場面になった。ここは、藻形さんのプロとしてのこだわりがある。子どもたちの調理作業は、通学合宿よりも体験合宿よりも念入りな食事作りを体験した。大人も子どもも一緒になって会食が始まった。口々に「おいしいね」という言葉が飛び出してくる。いただいたお米も炊いて、「おにぎり」にして一緒に並んでいる。加えて、出汁を取ったあとの昆布はきざんでお皿に盛りつけて、イリコとともに出された。全員が最高の昼食を満喫した。さらに、チャンポンの具材を使って焼きそばを作った。おにぎりも余分に握って、夕食用のお持ち帰りとしておにぎりと焼きそばが整った。1月に初めて、「子ども食堂」プレ事業として昼食作りをしてから今回が3回目である。大人と子供の本日の共同調理作業は終わった。子どもの笑顔、その笑顔を見た大人の満足感が4月の子ども食堂開設に進ませる。腹がへって、「子どもの日」は暗い祝日になったなどということがないように。4月29日の休日から「連休子ども食堂」を開こうなどという議論になっているが、果たしてうまく運ぶかどうか? ? ?
(飯塚市庄内生活体験学校々長、平成28年3月27日)